駒競行幸絵巻
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指定 | 重要文化財 |
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作品名 | 駒競行幸絵巻 (こまくらべぎょうこうえまき ) |
時代 | 鎌倉時代 |
地域 国 | 日本 |
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分野 | 美術 |
員数 | 一巻 |
サイズ | 34.4×381.7cm |
解 説
万寿元年(1024) 、関白藤原頼通(よりみち)の邸高陽院(かやのいん)で催された駒競(馬場で馬を走らせ勝負を競う遊戯)の荘重華麗、儀式ばった様は、藤原道長を中心とした一族の栄燿を語る『栄華物語』や、当時の世相、故実を書きとめた藤原実資(さねすけ)の日記『小右記(しょうゆうき)』などに記されている。これを絵画化したものに本巻と静嘉堂文庫美術館蔵本の断巻があり、いずれも『栄華物語』巻二十三「駒競の行幸」によっている。後一条天皇(母は道長の長女彰子)、東宮(母は道長の長女彰子)の行幸啓(ぎょうこうけい)があった九月十九日、描写は高陽院の門前に始まる。筵道上を寝殿に向かう束帯姿の東宮、縁には上達部や殿上人がとりどりの裾(きょ)を高欄にかけて居並び、御簾(みす)の下からは女房たちが出衣をのぞかせて雅な場に彩りを加えている。鮮やかな紅葉が水面をおおう池には、龍頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)一対の船を浮かべて管弦が奏され、穏やかな雰囲気をかもしだしている。一方、このような晴の席は、物見高い民衆が集う場でもある。門前に急ぐ僧侶、扇をかざして立ち話をする烏帽子姿の男たち、邸内には紛れ込んだ親子が衛士に追われている様などが描き添えられているのも見所の一つである。貴人には謹直な細線を、民衆には肥痩のある描線を用いて、形態に抑揚をつけている。また緑青、群青、朱、胡粉などを多用した色調の豊麗さ、釣殿(つりどの)や渡殿(わたどの)に敷かれた緑や緋の毛氈の緻密な描写などからは、儀式の壮麗さ、建物の豪奢さが鮮明にたどられる。詞に比して絵の場面は長くとられ、門前と邸内の二景によって構成されているが、両者をつなぐ部分は、素地に胡粉を輪郭付けしただけの霞と、数葉の楓を浮かべた池水の流れが薄くかすませて描かれ、きわめて自然に連続がはかられている。伝統的な作り絵の様式に則った画風や巧みな構成からは宮廷絵師の筆になるものとみられ、延慶二年(1309) 奉納の「春日権現験記絵巻」にみられる高階隆兼(たかしなたかかね)の作風に近いところから、隆兼もしくは隆兼周辺の絵師が想定される。公卿たちの似絵風の表現や自由濶達な群集描写に鎌倉時代半ばの絵画的特色がうかがえる。昭和六十二年、保存修理がなされた。