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紫泥 茶銚 「萬豊順記」印

作品名 紫泥 茶銚 「萬豊順記」印
(しでい ちゃちょう 「ばんぼうじゅんき」いん )
時代 清時代
地域 国 中国
分野 美術
員数 一口
サイズ 高4.7cm

解 説

江蘇省の宜興窯は、たいへんきめ細かく粘性の強い良土に恵まれている。土そのものの味わいと、紫、褐、黄、白の色調を生かして、釉を施さない作器が早くからなされてきた。明時代後半から清時代にかけては、葉茶を用いた喫茶が広まり、茶銚(日本で言う急須にあたる)が多く生産されている。琴棋書画に加えて、文房に茶器を整え茶を楽しむことが高雅の風となり、茶銚も実用性以外に雅味が追求され器玩の対象とされた。こうした風潮を背景に、宜興には多くの名工や工房が輩出した。宜興の茶銚は、中国だけでなく、江戸時代後期の煎茶の世界でもおおいに賞玩されている。本器は、平たく広い蓋と、胴、底の形が安定した趣をみせる。胎土は灰茶色がかった紫色で、底、胴、合口、注口、把手が別々に造られて接合されている。薄い胎を接合した箇所の処理にも、精緻な作風があらわれており、器表も丁寧に磨かれていぶし銀のような光沢が残っている。蓋の合口は深く、注口の先の鋭利さ、把手の円滑な形に、用をふまえた造形性があらわれている。鈕の中心に空気抜きの細孔があけられている。外底は浅く刳られ、中央に「萬豊順記」の印が捺されている。「萬豊順記」とは、清時代初期、宜興の工房が用いた印銘のひとつで、日本でも煎茶家に尊重された。

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