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黄瀬戸 立鼓花入 銘「旅枕」
指定 | 重要文化財 |
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作品名 | 黄瀬戸 立鼓花入 銘「旅枕」 (きせと りゅうごはないれ めい「たびまくら」 ) |
時代 | 桃山時代 |
地域 国 | 日本 |
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分野 | 美術 |
員数 | 一口 |
サイズ | 高20.9cm 口径11.0cm |
解 説
鼓の胴を立てた姿を想起させるところから立鼓花入と呼ばれ、黄瀬戸に数点の類品が伝わる。下半、特に底部は土取りが厚く安定が良い。轆轤は慎重に進めているが、上半は斜上方へ一気に挽きあげられ、このためであろうか、口縁近くでやや反り、肉薄となっている。土の乾燥あるいは粘性不足ゆえかすこし無理が生じ、亀裂ができている。細部にこだわらない様は、近世に至る美濃の陶技の性格であろう。底には糸切りの後、正円に近い高台が付けられているがこの作法は、平底の作に先行する。総釉のため、高台の内側にトチン(焼成の際、釉で付着するのを防ぐために用いる窯道具)を置いて焼成した痕跡が残っている。釉は総体によく溶け、黄味があるが、釉だまりでは古瀬戸灰釉に共通する緑味を含み、透明感がある。釉掛けの際、胴のなかほどを指先で支えたのであろう、胎土の鉄分が火に会って指先大の茶褐色のあとがある。効果を予測したものか、作法上の成りゆきか、鑑賞の際、視線を集め、土味を感じさせる要素となっている。16世紀後半の黄瀬戸には中国工芸の影響が残る。本器の据の端然とした様は、古銅、青磁など唐物花入の姿に倣うものであろう。佗び茶流行期の創意もうかがえ、ほの暗い茶室内で、この色調と姿は新しい感興を与えたことであろう。内箱の墨書「セとの里うご花入」を坂本周斎(1666〜1749)や千家の一燈(1719〜1771)が利休筆として外箱に書きとどめている。